政治家と暴力団の“餌食”となって倒産した「セボン」の自業自得

移転した新宿の本社玄関

 新宿歌舞伎町の一介のキャバレーボーイから、年商863億円の企業の社長となった山崎喜久男は、かなり強引な商売で業績を延ばしていた。しかし、その手法は政治家や暴力団に金をバラまいて利用するといった、あくどい反社会的なものが多かった。
 この山崎喜久男の経営する「セボン」が、民事再生法の適用を東京地裁に申請し、9月26日に事実上倒産した。負債総額621億円は不動産業界では、今年5番目の規模といわれている。
 平成11年12月14日の夕方から「セボン」の前身である「大伸フーズ」の25周年が「ホテルニューオータニ」“鶴の間”で開催された。


森喜朗、亀井静香、伊藤達也と国会議員が3名も・・・。(パーティーの来賓席の一部)


 約1000名の来賓のトップを切って、今は意気消沈しているが、当時の記念パーティーには自民党政調会長だった亀井静香のしゃがれ声の長広舌。その直後には、松下政経塾出身の衆議院議員伊藤達也が乾杯の音頭。そして三井生命会長坂田耕四郎、飛鳥建設専務福島幹久らが祝辞をのべ、講演は黒川紀章の弟である黒川雅之。司会は谷隼人、松岡きっこ夫妻で、ショーには吉幾三が出演していた。


このあと社名を「セボン」と変えて突っ走る 亀井静香にも便宜を図ってもらい、多額の金を取られた


「セボン」と社名を変える前の「大伸フード」の25周年で、「セボン」の絶頂期のパーティー案内状

 亀井に「セボン」からの献金が始まったのは、平成10年からで、ここから亀井と「セボン」は急速に親密になっていった。
 「セボン」の元社長室次長が言う。「当初建築基準法との問題があり、住宅ローンがつかなかった。そこを亀井さんの力で解決してもらったということです。ある日、社長が、社長室の金庫から500万円を紙袋に入れ、永田町のパレロワイヤルの亀井さんの事務所に行きました。やがて社長は、“亀井先生に怒られたよ。うちの下請のリストを出せと言う。下請にも献金させろだって・・・500万円じゃしょうがねえだろう”だってさ」


亀井の「志師の会」パーティー券を48枚96万円も押しつけられた



亀井のパーティーの入場券


 そして「セボン」の下請企業10数社から“献金”を受けさせた。また、1枚20,000円のパーティー券を48枚も送りつけられ、全部買わされた。
 元総理大臣の森喜朗は、なかなか金融機関から融資を受けられなかった「セボン」を「中小金融公庫」への口利きで14億円を調達できた。元森喜朗の私設秘書で小柴某なる男が「セボン」の社長室次長として席を置いての仕事だった。
 当時国土交通大臣だった扇千景は、人を介して「セボン」の視察を頼まれ、平成13年5月のある土曜日に、三鷹市の売出中の集合住宅を“視察”に訪れた。



『フォーカス』に掲載された仲むつまじい2ショット(左)が山崎喜久男(右)国交省大臣扇千景

 この日は展示会とあって、現場には家族連れや取材陣で多勢が扇千景を取り囲んだ。扇は「木をふんだんに使ってますね。あら川まで流れてる」そして一般客をつかまえて、「ここは金融公庫からもお金は出るし、心配ないですね」と、まるで「セボン」のセールスマン。その夕方には「セボン」社長の山崎らが車を連ねて、そばで有名な“深大寺”へ行き、食事をしている。


「セボン」は扇千景が“視察”に来ることを各テレビ局や新聞らに連絡したが、放映したのはテレ朝一社だった

 扇はしかも公用車で来ていたわけだから“視察”なのだろうが、現職の国土交通省の大臣が、特定の会社のセールスマンになっていいのか。
 この白黒の写真は「フォーカス」が独自に入手したものだろうが、他の数枚は“仕置人”のスタッフが写したもので、写真で見る限り大名行列もかくやと感心させられた。


大名行列もかくやとばかりの扇大臣の“視察”



こんなとこまで登って国交大臣が大サービス

 しかも「あれは視察ではなく見学。いいものをいいと言ってなにがいけないの」と記者たちの質問にムキになったという。こんな者が次に参議院議長だったのだから「参議院は良識の府」から「非常識の府」に認識を改めなければいけない。


あつかましくも石原都知事への「視察依頼書」も出したがこれは実現しなかった

 次は衆議院議員の伊藤公介と伊藤達也だ。
 写真を見てほしい。
 衆議院議員の伊藤公介が、第二次橋本内閣で国土庁長官に就任したときのもの。「セボン」社長の山崎にとってみれば、“はした金”で“大臣”の椅子に座れただろうが、“糞尿まみれの豚が座ったほうがまだましだ”という声が聞こえてきそうだ。


国土庁長官の椅子をキャバクラ狂いの山崎に提供している伊藤公介の恥かしい写真

見るからにズル賢そうな衆議院議員伊藤達也

 この二人の関係はもう一人の代議士伊藤達也にも当てはまるもので、山崎はこの二人の代議士を、前身の「大伸フーズ」が調布市にあったころから、地元の代議士として最大限利用した。「セボン」と社名を変えてからも、“事件もの”の物件を暴力団に安く地上げさせ、伊藤公介や伊藤達也らに“用途地域変更”や“容積率のアップ”を陳情する。こうして付加価値をつけて売却したり、“タウンハウス”と称した集合住宅を建て、ゴジラを使ったテレビコマーシャルを流し宣伝していた。
 前記の伊藤公介の元秘書の多庁市長 鈴木邦彦は伊藤公介の片棒を担いだためか、“贈収賄事件”で逮捕されたことがある。“仕置人”は扇千景が“視察”する直前に「タウンハウス」を取材したことがある。あの形式のマンションは三階建ては規制されているから、一階部分を半階分ぐらい地下に掘り下げて“実質三階建て”という。階段は狭くて急勾配で、一階から三階までのエレベーター付のものもあるが二人で乗ったら動かなくなった。



 昭和49年に「セボン」の前身である「大伸フード」を山崎喜久男の父親が調布市において食品販売業として設立した。その「大伸フード」を継いた山崎は平成12年に社名変更、資本金も10億2000万円に増資した。
 山崎はもともと新宿歌舞伎町でキャバレーのボーイをしていて、当時から暴力団と付きあいがあり、暴力団を使って次々と“事件もの”の土地を地上げし業績はうなぎのぼり。そんなとき、暴力団に「お前が地上げして家を建てた土地に、外車2台埋めてある」とオドされて5000万円出したり、暴力団の女に手を出して、毎月24万円(女の家賃)を20年間払う約束で払わされている、という。

 そんな「セボン」が調子に乗って上場の為の準備を始め、証券会社から毎日二人ほど常駐するようになった。その情報を耳にした“仕置人”は、「日本証券業協会」が、審査上場適格性を確認するための業務を委託している「(株)ジャスダック」に取材をかけた。その時に「セボンは地上げなどで暴力団に資金提供している。あんな会社を上場することは、上場した場合に善良な一般投資家に迷惑がかかる。その場合は君らにも責任をとってもらう」と言った。このことが早速「セボン」の耳に入った。

 それから数日して「福祉事業に関係している者ですが、先生のご意見を聞きたいのですが」という電話が“仕置人”に掛かってきた。その日指定された新宿東口の「聚楽」という喫茶店へ行くと、見るからに暴力団風の男が3人で座っていた。三人のうちの一人だけが“仕置人”と名刺を交換した。その名刺には“障害者福祉事業協会東京支部長宮本昇吾”と表面にあり、裏面には住所と<同和対策倫理委員会・理事>、<部落解放共闘協議会・統括本部長>、<亜細亜人権倫理協会・統括室長>、<日比人権擁護協会・専務理事>などの肩書きが並べてある。一見してインチキ名刺と思いながら“仕置人”が座ると、名刺をよこした人物が切り出した。
「先生、実はセボンの件でお願いがあります。今セボンは東証に上場するんです。そのために、山崎社長は銀行や関係者に株を割当てます。先生は暴力団にセボンから金が出てると審査の方に言ったそうですが、我々もメシを食い生活があります。あれは勘ちがいだった、ということを証券業協会に言ってくれませんか」三人の男たちは頭を下げた。
 ところが、“仕置人”の席から5〜6メートル離れて座っている男が、“仕置人”にカメラを向けているのが視界に入っていた。
「あそこでカメラを持っているのは、あなたたちの仲間ですね。ひとに頼みごとをしながら、断りもなく写真をとらせるとは無礼じゃないですか。不愉快だから帰ります」と言いながら“仕置人”はポケットから1000円札一枚を取り出してテーブルの上に置き、そそくさと席を立ち「聚楽」を出た。そしてタクシーに乗るや「セボン」の総務の人間に電話をかけた。「あなた方は、私の口封じに、また暴力団を使いましたね。どうせよこすのなら、もっと大物をよこしなさい」と言っておいた。
 結果として上場を果たせなく“仕置人”のことを相当恨んでいた、という話も聞こえてきたが、“仕置人”としてみれば、上場を阻止できたことは書き屋冥利につきる。

 「セボン」は平成10年ごろまでは資金ぐりが苦しく、“仕置人”の知人にまで高利の資金調達を依頼していた。このころ自民党幹事森喜朗の私設秘書を総務部にいれた社長の山崎は、森喜朗に急速に接近していった。そして森喜朗の公設秘書の口利きで、中小金融公庫から14億円の資金を引き出し、その中の10億円で調布駅前の建具屋のビルを買い取った。
 政府系の商工中金から14億円の資金を調達して駅前に本社を構えたことで、都市銀行、信用金庫からの資金調達が容易になり、平成9年当時は270億円だった年間売り上げが、同12年には400億円を超え、15年には500億円を超えた。
 「セボン」社長の山崎喜久男は、森喜朗によって資金調達がスムーズになったものの、政治家と暴力団を利用したつもりが、逆に“餌食”にされた企業の典型的な例である。



“仕置人”が発行していた『環境ジャーナル』で「セボン」を告発(平成15年2月10日)



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